フワーリズミー
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アル=フワーリズミー(الخوارزمي al-Khwārizmī)ことアブー=アブドゥッラー・ムハンマド・イブン=ムーサー・アル=フワーリズミー(أبو عبد الله محمد ابن موسى الخوارزمي)は、9世紀前半にアッバース朝時代のバグダードで活躍したイスラム科学の学者である。アッバース朝第7代カリフ、マアムーンに仕え、特に数学と天文学の分野で偉大な足跡を残した。
人物
中央アジアのホラズム(アラビア語でフワーリズム)の出身で、フワーリズミーの名は、「ホラズム出身の人」を意味するニスバ(通称)である。生没年は諸説あり、780年あるいは800年の生まれ、845年あるいは850年の没とされる。
バグダードに出てカリフのマアムーンに仕え、数学、天文学、さらに地理学、暦学などの分野で様々な研究を行った。
すでに散逸してしまっている著作も多いが、様々な書を著し、日時計、観象儀(アストロラーベ)なども作成したとされる。
地理学の分野では、(数学や天文学での活躍に比べてあまり有名ではないが)プトレマイオスの世界論を受け継いだ世界地図の作成に携わり、現存する著作もある。
主な著作
- 『フワーリズミー天文表』
- フワーリズミーの天文学に関する学問を集大成した書。インド天文学の理論を取り入れた初期アラビア天文学の代表作で、太陽・月・惑星の運動や食などを計算する多数の表からなっていたが、現存するものは不完全なラテン語訳のみである。
- 『ヒサーブ・アル=ジャブル・ワル=ムカーバラ』 hisāb al-jabr wa'l muqābala, (約分と消約の計算の書), 820年
- 最古の代数学書のひとつで、ラテン語に訳された。jabrは「バラバラのものを再結合する」という意味の jabara を語根とする語で「移項する」を原義とし、英語のアルゼブラ(代数)の語源となった。この著作にはプラス記号マイナス記号、アラビア数字は使用されていなかった。未知数は根 (ラテン語訳 radix) あるいは「もの」(ラテン語訳(12世紀) causa) と、また、未知数のうちで平方(ラテン語訳 census, 財産) や立方 (ラテン語 cubus) と表現されていた。
- 『インドの数の計算法』 Kitāb al-Jām'a wa'l-Tafrīq bi'l-Hisāb al-Hindī, 825年
- チェスターのロバート(あるいはバスのアデレード)によりラテン語名『アルゴリトミ・デ・ヌーメロ・インドルム (Algoritmi de numero Indorum)』(直訳『インドの数に関して、アル=フワーリズミー』、意訳で『実用算術についてのアルゴリズムの本』)という題で翻訳され、ヨーロッパで知られた。この本には、四則演算、代数方程式の解法、二次方程式、幾何学、三角法、数の十進法表記で 「0」ゼロ を空いている桁に使用することなどが書かれていた。この翻訳本の通称『アルゴリトミ』は、それから 500 年にわたってヨーロッパの各国の大学で数学の主要な教科書として用いられた。計算の手順を意味するアルゴリズム (Algorithm) やオーグリム (augrim) という言葉はこの書の冒頭 Algoritmi dicti (アル=フワーリズミーに曰く) に由来する。