ヨウ素
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一般特性 | |||||||||||||||||||||||||
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名称, 記号, 番号 | ヨウ素, I, 53 | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ハロゲン | ||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 17 (VIIB), 5 , p | ||||||||||||||||||||||||
密度, 硬度 | 4933 kg·m−3, no data | ||||||||||||||||||||||||
単体の色 | 光沢のある黒紫色 | ||||||||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||||||||
原子量 | 126.90447 u | ||||||||||||||||||||||||
原子半径 (計測値) | 140 (115) pm | ||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 133 pm | ||||||||||||||||||||||||
VDW半径 | 198 pm | ||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Kr]4d10 5s2 5p5 | ||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 18, 18, 7 | ||||||||||||||||||||||||
酸化数(酸化物) | ± 1, 5, 7(強酸性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 斜方晶系 | ||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 (反磁性) | ||||||||||||||||||||||||
融点 | 386.85 K (113.75 ℃, 236.66 °F) | ||||||||||||||||||||||||
沸点 | 457.4 K (184.25 ℃, 363.7 °F) | ||||||||||||||||||||||||
モル体積 | 25.72 × 10−3 m3·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||
気化熱 | 20.752 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 7.824 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | no data | ||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | no data | ||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||
クラーク数 | 0.00003% | ||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 2.66 (ポーリング) | ||||||||||||||||||||||||
比熱容量 | 145 J·kg−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||
導電率 | 8.0 ×10-8/m·Ω | ||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | 0.449 W·m−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 1008.4 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||
第2: 1845.9 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||
第3: 3180 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||
(比較的)安定同位体 | |||||||||||||||||||||||||
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注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。 |
ヨウ素(ヨウそ、沃素、iodine)は原子番号 53 の元素。元素記号は I。あるいは分子式が I2 と表される二原子分子の呼称。
ハロゲン元素の一つ。ヨード(沃度)ともいう。融点は113.6°Cであるが、昇華性がある。固体の結晶構造は紫黒色の斜方晶で、反応性は塩素、臭素より弱い。水にはあまり溶けないが、ヨウ化カリウム水溶液にはよく溶ける。これは下式のように、ヨウ化物イオンとの反応が起こることによる。
- I− + I2 → I3−
目次 |
歴史
ベルナール・クールトアによって1811年に海藻灰から発見された。彼の友人シャルル・ベルナール・デゾルムとニコラ・クレマンがジョゼフ・ルイ・ゲイ=リュサックとアンドレ=マリ・アンペールにサンプルを送った上で1813年11月29日に発表した。
ゲイ=リュサックは12月6日にこの物質が元素もしくは酸化物であると発表した。アンペールからサンプルを提供されたハンフリー・デーヴィーは実験によりこの物質が塩素の性質に類似する事を発見し、王立協会宛の12月10日日付の手紙で、この物質が元素であることを発表した。
用途
分析化学
ヨウ素溶液にデンプンを加えると、ヨウ素デンプン反応を起こし藍色を呈する(デンプンは微量でも鋭敏に反応する。ヨウ素デンプン反応を参照)。この反応はヨウ素滴定(ヨードメトリー)に利用される。分析化学では、脂質などの有機化合物に含まれる炭素-炭素二重結合の量の指標としてヨウ素価が用いられる。また試料中の水分量を決定するための方法としてカール・フィッシャー滴定が知られている。
消毒薬
ヨウ素は消毒薬としてもよく用いられる。ヨウ素のアルコール溶液がヨードチンキである。ヨウ素とヨウ化カリウムのグリセリン溶液がルゴール液である。ヨウ素とポリビニルピロリドンの錯化合物はポビドンヨードとして知られる。
生体とヨウ素
海藻類はヨウ素を海水から濃縮する。ヨウ素は海藻を焼いた灰を水に溶かし塩素で酸化して得ていた。現在はヨウ化ナトリウムを含む地下水を塩素で処理して容易に得られる。
体内で甲状腺ホルモンを合成するのに必要なため、ヨウ素は人にとって必須元素である。人体に摂取、吸収されると、ヨウ素は血液中から甲状腺に集まり、蓄積される。海洋の中にある日本では食生活の中で海藻などから自然にヨウ素の摂取が行われるが、大陸の中央部ではヨウ素を摂取する機会がほとんどないので、ヨード欠乏症による甲状腺異常が多く発生した。アメリカではFDAの規定により食塩の中に一定量のNaIが混入させてある。また、モンゴルでは日本からの援助で国民にヨウ素剤を服用させた結果、甲状腺異常の患者を激減させた。中国では食塩にヨードの添加を義務付けている。また、日本ではヨードを含有することをうたった鶏卵が売られている。逆にヨード制限食を必要とする際には、昆布などの摂取を控えなくてはならない。同位元素による甲状腺シンチグラムには、123Iなどを用いる。チェルノブイリ原子力発電所の事故では、核分裂生成物の131Iが多量に放出されたが、これが甲状腺に蓄積したため、住民に甲状腺ガンが多発した。放射能汚染が起きた場合、放射性でないヨウ素の大量摂取により、あらかじめ甲状腺をヨウ素で飽和させる防護策が必要である。そのため、日本は国民保護法に基づく国民の保護に関する基本指針により、核攻撃等の武力攻撃が発生した場合に武力攻撃事態等対策本部長又は都道府県知事が、安定ヨウ素を服用する時期を指示することになっている。
資源
ヨウ素は海水中に0.05ppm(0.000005%)含まれ、推定資源量は3億4千万トンである。ヨウ素は生物濃縮される元素で、海藻の灰から抽出され0.45%以上のヨウ素が含有される。かつては海藻を原料に工業的に生産されたが、1959年以降は工業的には天然ガス、チリ硝石、石油の副産物として生産されている。
工業的にはヨウ化物イオンを含む水溶液を酸性条件下で塩素を吹き込み、酸化されたヨウ素単体を昇華精製する。
米国地質調査所の2005年版統計[1]によると、全世界のヨウ素の生産量は約25,500tである。その内訳は、一位のチリが16,200t、二位の日本国6,500tであった。国連統計局の2002年度統計[2]によると、輸出量はリサイクルされたものも含めて一位のチリが$447,612,776、二位の日本国が$195,847,819であった。
2008年度日本国内生産量は9,231t、工業消費量は3,288tであり[3]、日本のヨウ素生産量のほとんどは千葉県の水溶性天然ガス鉱床(南関東ガス田)から産出する地下水から生産されており、資源小国である日本にとっては貴重な輸出資源である。ちなみに千葉県は世界一のヨウ素産出地。
2002年輸出金額($) | 2002年生産量(ton) | |
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チリ | 447,612,776 | 10,500 |
日本国 | 195,847,819 | 6,100 |
合衆国 | 51,136,966 | 1,700 |
ベルギー | 137,773,860 | - |
その他 | 43,569,769 | 1,300 |
計 | 875,941,190 | 19,600 |
化合物
ヨウ素の水素化物(ヨウ化水素)は強酸性を示す。
- ヨウ化銀 (AgI) 人工降雨に使われる。またα-AgIは超イオン伝導体でもある。
- ヨウ化カリウム (KI)
- ヨウ化水素 (HI)
- ヨウ化窒素(窒化ヨウ素)(I3N) - 濃アンモニア水に少量のヨウ素の結晶を投入すると、針状結晶として生じる。これは乾燥させると触ることができないほど敏感な物質で、部屋の中で手を叩く振動でさえも爆発を起こす。
- ヨウ化ナトリウム (NaI)
ヨウ素のオキソ酸
ヨウ素のオキソ酸は慣用名をもつ。次にそれらを挙げる。
オキソ酸の名称 | 化学式 (酸化数) | オキソ酸塩の名称 | 備考 |
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次亜ヨウ素酸 (hypoiodous acid) | HIO (+I) | 次亜ヨウ素酸塩 ( - hypoiodite) | |
亜ヨウ素酸 (iodous acid) | HIO2 (+III) | 亜ヨウ素酸塩 ( - iodite) | |
ヨウ素酸 (iodic acid) | HIO3 (+V) | ヨウ素酸塩 ( - iodate) | ヨウ素酸塩は危険物第1類 |
過ヨウ素酸 (periodic acid) | HIO4 (+VII) | 過ヨウ素酸塩 ( - periodate) |
※オキソ酸塩名称の'-'にはカチオン種の名称が入る。
同位体
詳細は「ヨウ素の同位体」を参照
- 131Iは核分裂によって生成される。半減期は8.1日である。
- 129Iは半減期が1570万年である。宇宙線やウランの自発核分裂によって常に一定量が大気中に放出されている。
- 127Iは通常のヨウ素で常に海水中に一定量が存在する。
- 129I/127Iは1500x10-15と推定される。生物に取り込まれたヨウ素の同位体の比率により年代を求めることが可能である。千葉県の地下水(鹹水)に含まれるヨウ素の年代は4890万年前と推定される。プレートと共に沈み込んだ海底堆積物が上昇してきた付加体と推定される[4][5][6]。
参照資料
出典
- ^ Mineral Commodity Summaries
- ^ Trade Statistics Database
- ^ 経済産業省生産動態統計・生産・出荷・在庫統計平成20年年計による
- ^ アイソトープニュース2002年12月号P7-11
- ^ 放医研ニュース2001年12月号P1-2
- ^ Earth and Planetary Science Letters 192(2001)583-593
関連項目
外部リンク
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