生活保護
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生活保護(せいかつほご)とは、日本の政府・自治体が経済的に困窮する国民に対して生活保護費を支給するなどして最低限度の生活を保証する制度。
目次 |
概要
水際作戦や不正受給などの問題点については生活保護問題を参照。
生活保護とは憲法第25条に規定する理念(生存権)に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することをいう。最低限の生活ができない人間を放置せず、社会全体で支え合うべきであるという価値観が背景にある。高齢化社会に伴って高齢者の受給が増えているため多大な財政負担が発生しており、深刻な問題となっているが、その反面、累進税率に基づいて徴収した税を財源として最も困窮している者に対して支給されるので、所得の再分配機能=格差是正効果もあるとされる。なお、生活保護の申請には住所は必要とされないはずであるが、住所のない者には役所が申請を受理しない(本来なら違法)事例があると指摘されている(生活保護問題参照)。
生活保護の原則
生活保護は次の原則に則って適用される。
- 無差別平等の原則(生活保護法第2条)
- 補足性の原則(生活保護法第4条)
- 生活保護は、資産(預貯金・生命保険・不動産等)、能力(稼働能力等)や、他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用してもなお、最低生活の維持が不可能なものに対して適用される。
- 民法に定められた扶養義務者の扶養、その他の扶養は生活保護に優先して実施される。
- 申請保護の原則(生活保護法第7条)
- 生活保護は原則として要保護者の申請によって開始される。申請権は、要保護者本人はもちろん、扶養義務者や同居の親族にも認められている。ただし、急病人等、要保護状態にありながらも申請が困難な者もあるため、法は急迫保護(職権保護)が可能な旨を規定している。
- 世帯単位の原則(生活保護法第10条)
- 生活保護は世帯を単位として要否を判定し、その程度を決定する。
- 例外として、世帯分離という制度がある(大学生など)。
- 生活保護は世帯を単位として要否を判定し、その程度を決定する。
生活保護の種類
生活保護は次の8種類からなる。
- 生活扶助
- 生活困窮者が、衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助であり、飲食物費、光熱水費、移送費などが支給される。主として第一類と第二類に分け計算され、第一類が個人ごとの飲食や衣服・娯楽費等の費用、第二類が世帯として消費する光熱費等となっている。
- 教育扶助
- 生活に困窮する家庭の児童が、義務教育を受けるのに必要な扶助であり、教育費の需要の実態に応じ、原則として金銭をもって支給される。
- 住宅扶助
- 生活困窮者が、家賃、間代、地代等を支払う必要があるとき、及びその補修、その他住宅を維持する必要があるときに行われる扶助である。原則として金銭をもって支給される。
- 医療扶助
- 生活困窮者が、けがや病気で医療を必要とするときに行われる扶助である。原則として現物支給(投薬、処置、手術、入院等の直接給付)により行われ、その治療内容は国民健康保険と同等とされている。なお、医療扶助は生活保護指定医療機関に委託して行われるが、場合により指定外の医療機関でも給付が受けられる。予防接種などは対象とならない。
- 介護扶助
- 要介護又は要支援と認定された生活困窮者に対して行われる給付である。原則として、生活保護法指定介護機関における現物支給により行われる。介護保険とほぼ同等の給付が保障されているが、現在普及しつつあるユニット型特養、あるいは認知症対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護は利用料(住宅扶助として支給)の面から制限がある。
- 出産扶助
- 生活困窮者が出産をするときに行われる給付である。原則として、金銭により給付される。
- 生業扶助
- 生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、又は技能を修得するための費用、就労のためのしたく費用等が必要なときに行われる扶助で、原則として金銭で給付される。平成17年度より高校就学費がこの扶助により支給されている。
- 葬祭扶助
- 生活困窮者が葬祭を行う必要があるとき行われる給付で、原則として、金銭により給付される。
これらの扶助は、要保護者の年齢、性別、健康状態等その個人または世帯の生活状況の相違を考慮して、1つあるいは2つ以上の扶助を行われる。
生活保護の地区分けと基準額
生活保護は全国を市町村単位で6段階に分けている。また、冬期加算の基準にのみ使用される5段階の区分がもうけられている。
級地制度
級地制度(きゅうちせいど)とは、生活保護による扶助を行なう際に、後述の生活保護法の第8条第2項に基づき、地域毎の生活様式・立地特性に応じて生じる物価・生活水準の差を生活保護基準に反映させることを目的とした制度。
- 生活保護法第8条
- (基準及び程度の原則)
- 第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
- 2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。
変遷
生活保護法が成立した昭和21年以降、地域格差を是正する級地の考え方は当該市町村の人口規模・必要とされる生計費・物価の地域差・消費水準や消費実態・生活様式や慣行等々を勘案して2005年現在までに級地の区分の考え方が7回見直しされている。しかしながら、いまだ東京都などでは、地域内での家賃格差が大きく、実情にはあっていない。
期間 | 区分 | 概要 | 最大格差 |
---|---|---|---|
1946年3月 - 1946年6月 | 6地域区分割 | 人口規模に応じ、地域毎に必要な生計費を算定する標準生計費方式を採り入れた。 | |
1946年7月 - 1951年4月 | 3地域区分割 | 6地域区分割を統合して3区分した。 | |
1951年5月 - 1953年7月 | 5級地制 | 物価の地域格差に着眼した。最高を1級地、最低を5級地の5区分とした。 | 100対85.9 |
1953年7月 - 1957年3月 | 6級地制 | 地域格差の内訳として物価と消費の水準、生活様式を加味した。5級地制に加えて更に上位の特級地を設定した。 | 100対70.0 |
1957年4月 - 1978年3月 | 4級地制 | 物価差・消費実態・生活慣行。 | 100対73.0 9%均等差 |
1978年4月 - 1987年3月 | 3級地制 | 100対82.0 | |
1987年4月 - | 6級地制 | 100対77.5 4.5%均等差 |
地域の級地区分
地域区分は市町村を単位として区分される2003年11月15日現在の厚生労働省による級地別市町村数は次の通りである。[2]
総数 | 1級地-1 | 1級地-2 | 2級地-1 | 2級地-2 | 3級地-1 | 3級地-2 |
---|---|---|---|---|---|---|
3,180 | 58 | 50 | 125 | 85 | 741 | 2,121 |
級地区分一覧
次に示す一覧は1987年4月より施行された6級地制による都道府県別の級地区分の2009年度版の一覧である。
1級地の1
1級地の2
2級地の1
2級地の2
3級地の1
北海道地方 | ||||
---|---|---|---|---|
東北地方 | ||||
関東地方 | ||||
中部地方 | ||||
関西地方 | ||||
中国・四国地方 | ||||
九州・沖縄地方 | ||||
3級地の2
1級地、2級地、3級地の1以外の市町村
冬期加算地区別区分表
Ⅰ区 | Ⅱ区 | Ⅲ区 | Ⅳ区 | Ⅴ区 | Ⅵ区 |
---|---|---|---|---|---|
北海道 青森県 | 岩手県 山形県 | 宮城県 福島県 | 石川県 福井県 | 栃木県 群馬県 | その他の都府県 |
生活保護/基準額/生活扶助1級地の2
生活保護/基準額/生活扶助2級地の1
生活保護/基準額/生活扶助2級地の2
生活保護/基準額/生活扶助3級地の1
生活保護/基準額/生活扶助3級地の2
生活保護/基準額/生活扶助共通
生活保護/基準額/教育扶助
生活保護/基準額/出産扶助
生活保護/基準額/住宅扶助
生活保護/基準額/生業扶助
生活保護/基準額/一時扶助
生活保護/基準額/医療扶助
生活保護の財政
生活保護にかかる費用は平成17年度において約2兆7千億円となっており増加中である。高齢者の生活保護受給世帯が増加傾向であり、今後、団塊世代の生活保護受給世帯の増加に伴い、倍増していくことが確実である。
生活保護の支給例
平成17年度の基準(第61次改訂生活保護基準額表より)東京都特別区内在住(1級地の1)
- 単身世帯 31歳
- 第1類 40,270円(20-40歳)
- 第2類 43,430円(単身世帯)
- 住宅扶助 (最大)53,700円
合計 137,400円(月額)
- 4人世帯 41歳(障害者1級、障害年金無)、38歳、12歳、8歳、妊娠中(7ヶ月)
- 第1類 38,180円(41歳)、40,270円(20-40歳)、42,080円(12-19歳)、34,070円(6-11歳)
- 第2類 55,160円(4人世帯)
- 各種加算
- 妊婦 13,810円(妊娠6ヶ月以上)
- 障害者 26,850円(障1・2級/国1級)
- 特別介護料 12,090円(世帯員)
- 児童養育加算 5,000円(第1・2子)
- 住宅扶助 (最大)69,800円
- 教育扶助 2,150円(小学校)、4,180円(中学校) 学級費等(最大)610円(小学校)、740円(中学校)
合計 344,990円(月額) ※小中学校の教材費、給食費、交通費等は実費支給。
東京都区部など | 地方郡部など | |
---|---|---|
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳) | 234,980円 | 199,380円 |
高齢者単身世帯(68歳) | 80,820円 | 62,640円 |
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) | 121,940円 | 94,500円 |
母子世帯(30歳、4歳、2歳) | 177,900円 | 142,300円 |
実施機関
生活保護の実施機関は、原則として、都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長であり、これらの事務は法定受託事務である。なお、福祉事務所を管理していない町村(ほとんどの町村)においては、その町村を包括する都道府県知事がこの事務を行う。
また、都道府県知事、市町村長の下に福祉事務所長及び社会福祉主事が置かれ、知事・市町村長の事務の執行を補助し、民生委員は市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとされる。
社会福祉法では、生活保護を担当する現業員、いわゆるケースワーカーを市部では被保護世帯80世帯に1人、町村部では65世帯に1人を配置することを標準数として定めている(第16条)。
これら実施機関では原則として厚生労働省が示す実施要領に則り保護を実施しているが、厚生労働省は技術的助言として実施要領を示すだけであって個別の事例の判断は一切行わない(監査や再審査請求での裁決を除く)。そのため、法及び各種通達等において定めることができない事例については、法の趣旨と実施機関が管轄する地域の実情などを勘案して判断される。
保護施設
都道府県・市町村は、生活保護を行うため、保護施設を設置することができる。なお、市町村が保護施設を設置する場合、都道府県知事への届出が必要である。また、保護施設が設置できるのは、都道府県・市町村のほか、社会福祉法人と日本赤十字社だけである。
保護施設の種類
保護施設には次の5種類がある。
- 救護施設
- 更生施設
- 医療保護施設
- 授産施設
- 宿所提供施設
外国籍の者に対する支給についての議論
世界の中では外国籍者に生活保護を支給する国はまれであることから、支給対象は日本国籍保有者に限定するべきとの声も根強い。2007年現在、厚生労働省の統計では598,073人の外国籍者に生活保護を支給しており、生活保護受給者の約半数が外国籍者であった。北九州市の「水際作戦」のように、日本国籍保有者でも生活保護を受給したくてもできない人間が出てきている中で、外国籍者に支給を続けていることへの批判も根強い。
生活保護の対象者
1946年の旧生活保護法においては全ての在住者を対象としたが、1950年の改訂で国籍条項が加わり、日本国内に住む日本国籍を持つ者のみが対象とされた。
その後1954年の厚生省社会局長通知「正当な理由で日本国内に住む外国籍の者に対しても、生活保護法を準用する」を根拠として、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などの日本国への定着性が認められる外国人に対して、予算措置という形で保護費の支給を実施している。このことから、外国籍の者は生活保護法上の行政処分に対する行政不服審査法に基づく不服申立てはできないとされている。
被保護者の権利と義務
審査の結果、生活保護費を受給できると認められた者を被保護者という。被保護者は生活保護法に基づき次のような権利を得るとともに義務をも負う。
(権利)
- 不利益変更の禁止 - 正当な理由がない限り、すでに決定された保護を不利益に変更されることはない(第56条)。
- 公課禁止 - 受給された保護金品を標準として租税やその他の公課を課せられることはない(第57条)。
- 差押禁止 - 被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない(第58条)。
(義務)
- 譲渡禁止 - 保護を受ける権利は、他者に譲り渡すことができない(第59条)。
- 生活上の義務 - 能力に応じて勤労に励んだり支出の節約を図るなどして、生活の維持・向上に努めなければならない(第60条)。
- 届出の義務 - 収入や支出など、生計の状況に変動があったとき、あるいは居住地または世帯構成に変更があったときは、速やかに実施機関等へ届け出なければならない(第61条)。
- 指示等に従う義務 - 保護の実施機関が、被保護者に対して生活の維持・向上その他保護の目的達成に必要な指導や指示を行った場合(法第27条)や、適切な理由により救護施設等への入所を促した場合(法第30条第1項但書)は、これらに従わなければならない(法第62条)。
- 費用返還義務 - 緊急性を要するなど、本来生活費に使える資力があったにも関わらず保護を受けた場合、その金品に相当する金額の範囲内において定められた金額を返還しなければならない(法第63条。主に、支給されるまでに時間がかかる年金などが該当する)。
生活保護世帯数の推移
厚生労働省の社会福祉行政業務報告によれば、生活保護を受けている世帯の数(被保護世帯数)は、1980年度の746,997世帯から1992年度には585,972世帯にまで減少していたが、その後増加に転じ2004年度は998,887世帯と1980年度の約1.3倍に増加している。2005年度には、一月の平均被保護世帯数が100万世帯(外国籍35万世帯含む[1])を突破、増加傾向にある。2009年度には更に増えて、119万世帯となり、同年6月には123万世帯と過去最高値を記録した。[2]。激増する高齢受給者の問題や不況により更に増えて、150万世帯に近づきつつあると想定されており、保護費財源の問題をどうするか、避けて通れなくなってきている。
被保護世帯を世帯類型別に見ると、高齢者世帯、障害者世帯、傷病者世帯、母子世帯、父子世帯、その他の生活困窮世帯と分けることができ、中でも高齢者世帯は趨勢的に増加しており、1980年度は全体の30.2%であったが2004年度には46.6%とほぼ半数を占めるようになっている。なお、ここ数年不況による雇用環境の悪化で、失業による生活保護受給も増加中である。
一方、所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、実際に受給している割合を示す「捕捉率」は、イギリスでは87%、ドイツは85~90%なのに対し、日本は約10~20%となっている[3]。
生活保護をめぐる事件
- 1950年、長田区役所襲撃事件(在日韓国・朝鮮人による生活保護費受給を求める騒乱事件)
- 1951年、下里村役場集団恐喝事件(在日韓国・朝鮮人による生活保護費受給を求める騒乱事件)
- 1952年、万来町事件(在日韓国・朝鮮人による生活保護費の増額を求める騒乱事件)
その他、生活保護をめぐる事件は複数起きている[4]。
生活保護をめぐる訴訟
生活保護をめぐる訴訟として「朝日訴訟」が有名である。それ以外には「学資保険訴訟」、「加藤訴訟」、「柳園訴訟」、「高生活保護訴訟」、「林訴訟」などがある。
地方分権と生活保護
2005年、国(厚生労働省)と地方との間で「三位一体の改革」の一環として、生活保護費の国と地方自治体との負担率を変更しようとの議論が行われた。
現制度では支給される保護費について国3/4、地方1/4の割合で負担しているが、これを国1/2、地方1/2に変更しようとするものである。さらに住宅扶助の一般財源化(地方交付税交付金に含めて国が交付)、保護基準(最低生活費)を地方が独自に設定することができるようにしようとした。
厚生労働省の主張は、生活保護行政事務の実施水準が低いところは保護率が高い水準にあり、保護費の負担を地方に大きく負わせることで生活保護行政事務の実施水準を向上させざるを得ない状況にして、国と地方を合わせた保護費の総額を減らそうというものである。
しかしながら地方六団体は、憲法第25条で国が最低生活の保障を責任を持っていること、最低生活を保障するという事務は地方自治体に裁量の幅がほとんど無いこと(幅を持たせるとすれば、最低生活費を下げるあるいは上げるということになる)、仮に現段階での地方の負担増に合わせて税源を移譲されたとしても今後保護世帯数が増加すればその分が総て地方の負担となること、等から猛反発した。福祉行政報告例第1表~第4表並びに第6表の生活保護関連統計の国への報告を停止する行動に出た自治体もあった。
保護率が高い地域を都道府県ごとにみると、北海道、青森県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県等であり、地域経済が活発ではない地域(北海道、青森県、沖縄県)、過去の炭坑閉鎖の影響を引きずる地域(北海道、福岡県)が主である。その反面、東北地方の中でも青森県が突出して保護率が高い、四国では保護率が高い県(高知県、徳島県)と低い県(香川県、愛媛県)に明確に分かれる等、単に経済状況だけでは説明しきれない面もある。
逆に保護率が最も低い県は富山県であり次いで島根県である。理由として両地域は保守的で生活保護を恥と見る人々が多い事があげられる。また富山県は持ち家率や世帯所得が日本一高くそもそも生活保護の対象となる家庭が少ないと予想される。
保護率の高低は、経済状況だけでなくその地域の世帯の状況(1世帯当たりの世帯員数、3世代同居比率等)や県(道)民性、住民の意識(権利として主張する、恥だから受けたくない)等様々な要因が絡み合い、一概に言い切れるものではない。
なお、この問題については後に撤回され、現行通りの負担割合とすることで決着した。
各国の類似制度
- アメリカ合衆国では日本の生活保護に相当するものとして現在Aid to Families with Dependent Children(AFDC 扶養児童の為の家族手当て)に替わってTemporary Assistance for Needy Families(TANF 貧しい家庭のための一時給付)が支給されている。ただし、TANFはAFDCに比べて期間が一時的となり、就職しているのが受給要件である。また、貧困家庭にはフードスタンプの交付があり、最低限の食生活の維持が図られる措置が講じられる。
- 中華人民共和国では、日本の生活保護に相当するものとして、1999年から最低生活保障制度が発足した。中国では透明性を確保するため申請者と受給者の個人情報が公開されていることが特徴である。
- フランスでは、1988年に長期失業者に対する社会参入最低所得(RMI)制度が発足。支給額は、2008年の水準で独身者が月額455ユーロであった。これは、パートタイム労働者の最低賃金が月額換算で約500ユーロであり、家族が2人以上いればRMI制度を利用するのと同等の経済水準となることから労働意欲を失わせかねない状態であった。このことから、2009年6月1日より就労意欲を喚起させる新たな積極的連帯所得(RSA)制度が発足。就職しても収入額に応じて段階的な保障が受けられる制度に変更した。
関連項目
出典
参考文献
- 東京ソーシャルワーク編 『How to 生活保護(介護保険対応版)―暮らしに困ったときの生活保護のすすめ』 現代書館、2000年5月。ISBN 4768434223
- 尾藤廣喜・松崎喜良・吉永純編 『これが生活保護だ―福祉最前線からの検証』 高菅出版、2004年3月。ISBN 4901793101
- 水島宏明 『母さんが死んだ―しあわせ幻想の時代に ルポルタージュ「繁栄」ニッポンの福祉を問う』 社会思想社、1990年2月。ISBN 4938536412
- 「生活保護制度の現状等について」『生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会』 厚生労働省、2005年4月20日。
- 『生活保護VSワーキングプア 若者に広がる貧困』大山典宏著 PHP新書 2008年01月15日 ISBN978-4-569-69713-0
- 『生活保護が危ない~「最後のセーフティーネット」はいま~』産経新聞大阪社会部著 扶桑社新書 2008年8月30日 ISBN 978-4-594-05745-9
- 『生活保護手帳 2008年度版』生活保護手帳編集委員会 中央法規出版 2008年7月30日 ISBN 978-4-8058-4823-4
外部リンク
- 厚生労働省ウェブサイト > 生活保護と福祉一般
- 厚生労働省 白書等データベース > 厚生労働白書 > 平成17年版厚生労働白書 第1部第2節第4章
- 全国生活と健康を守る会連合会
- 生活保護110番
- 日本の奇妙な生活保護制度
- フランスの生活制度の変更を伝える朝日新聞記事(2009年6月1日)