的
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的(てき)とは、接尾辞の一つ。
漢字「的」の本来の意味は「あきらか」で、この意味での熟語には「的確」などがある。のちに音を仮借し、「まと」の意味と、助詞を表すようになった。
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助詞の「的」
助詞「的」は大まかには日本語の「の」に当たる。この助詞は古典にはあまり見られない、比較的最近のものである。それゆえ、日本語へ入った熟語は少ない。一方、現代中国語では代表的な助詞の1つである。
1930年代ごろ、それまで「底」と書かれていた所属の助詞が「的」と書かれるようになり、「的」の意味はいっそう広まった。
厳密には「的」と「の」の意味範囲はいくぶん違い、機械的に訳すことはできないが、日本でも中国でも、「的」=「の」と広く認識されている。そのため、中国語を母語とする日本語学習者には、「の」とは訳せない「的」を「の」と訳し不自然な日本語にしてしまう間違い(例 「幸福的家庭」→×「幸福の家庭」○「幸福な家庭」)がしばしば見られる。また、日本の漫画や小説では、中国人の話す日本語で、助詞の「の」を「的」に置き換えることがあるが、もちろん中国語として正しいとは限らない。
音訳語の「的」
日本では近代になり、英語の-icやドイツ語の-ikといった形容詞を生成する語尾の音訳に「的」が使われるようになった。読みが「テキ (teki)」であることからわかるように、最初は、Romantic(浪漫的)のように、-tで終わる語根に-icが付いて語尾が-ticとなった語の音訳に使われた。しかしのちには、-ic全般の音訳に使われるようになった。
この音訳は西洋文献の翻訳において多用された。まもなく、元が音訳語であることがほとんど忘れ去られ、名詞全般につけることができるようになった。これらの「的」で終わる語は多くが中国にも輸出され、広く使われている。
若者言葉の「的」
「私(わたし)的には」「気持ち的には」など若者言葉の中で用いられる表現について述べる。
概要
- たとえば、「的」という言葉を日本国語大辞典で紐解いてみると、
- そのような性質を持ったものの意を添える
- 文句を受けて全体を体言格とする場合
- 漢語に付いて、直接、または「な」を伴って連体修飾に使う
- そのような性質を有する、それに近い、の意を表す
- それに関する、それに付いての、その方面に関わるなどの意
を示す。また、中国語では「~の」という意味がある。ところが、2000年の新語・流行語大賞のトップテンに選ばれた「私的には…」は、「~の方(ほう)」「~みたいな」などと同じく、「~だ」「~です」と言い切らない、若者を中心に多用されるぼかし言葉の代表格といえる。接頭辞の超(またはチョー)と同じく、本来の言葉の意味を鑑みると正しいとはいえないけれども誤用として全否定するのも難しい。
主な用法
冒頭にも挙げたように、若者言葉的な用法とは
- 「~は」をぼかした表現
- 「~としては」の意
であり、前者は「気持ち的には」「長さ的には」、後者は「わたし的には」「○○さん的には」などが挙げられる。
中国
中国でも文化大革命以降に育った世代が「的」を多用し、「的」という語の意味の多さから年配者にはいい顔をされない。