盗作
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盗作(とうさく)とは、他人の著作物にある表現、その他独自性・独創性のあるアイディア・企画等を盗用し、それを独自に考え出したものとして公衆に提示する反倫理的な行為全般を指す。「剽窃(ひょうせつ)」とも呼ばれる。オマージュ、パロディとは区別される。
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前近代における盗作・借用概念
16世紀以前の西洋では著作権という概念はほとんど存在せず、ローマ楽派の対位法は先生も弟子も全て同一の物を使用しており、なおかつ「似たような」作品に仕上がるのを「完成された芸術」とした。現在ならば明らかに著作権侵害に該当することも作曲家同士で行いあうのが常であった。これは生活がパトロンによって保障された者同士での情報交換であったために、価値をめぐる競争が過熱しなかった時代の産物とも言われる。日本の絵画においても、真似は一つの技法であった。
オリジナルを他と区別する時代が到来したのは近代以降、明確には解っていないが、恐らくは19世紀であると推察されている[要出典]。この時代に「~の主題によるパラフレーズ」が流行したということは、「オリジナルが書けなくなった」という理由でもあった。機能和声の枠内でロマンティックに振る舞う時代が100年強続くということは、当然、旋律断片の重複が避けられなくなることとなった。
盗作と「盗作疑惑」
大抵、盗作行為の有無は、作者側または裁判所などの第三者機関が認めるなど、何らかの経緯を経て確定されることとなる。そのため、ある作品に盗作の疑惑がもたれても、すぐにそれを盗作とみなすことができず、結果的に、いわゆる「盗作疑惑」の段階で終わってしまう事例も多い。
欧米の法律・判例では、既存の作品の盗作が発覚した場合、その原作品の著作権者にそれなりの対価を払うことが一般的である。日本国の著作権法では、公衆に提示された作品が盗作であっても、具体的な表現でないアイディア・設定などの盗用である場合は、こうした法的制裁を設けていない。ただし、著作権法で保護されるものが表現であってアイディアではない点は、世界共通の認識である。
偶然他者の著作物と類似した作品が完成したときに、他者の著作物を盗用せずにそれを作っていたのであれば作品は盗作とならず、その作者のオリジナルであるとして認められる。また時折誤解されることがあるが、盗作とは他者の表現や独創性のあるアイディアを盗用して類似した作品を作ることであり、類似した作品を作ること全てが盗作となるわけではない。「~に影響を受けた作品」「~風の作品」と称されるものは作風の模倣であって、盗作には該当しない場合が多い。
インターネット普及後は、個人が「盗作疑惑」を議論し、公表することが容易になった。しかし、このようなインターネットにおける検証は、原作品の著作権者の意思に基づかないなど、本来の当事者が不在のまま行われる場合が多い。また、ありふれた類似点(物語の類型、音楽のケーデンスなど)を羅列して根拠としていることや、従来その業界では「引用」程度と認識されている(例えば音楽の場合、他の原作曲と同じメロディを1小節程度の長さだけ引用、或いは類似する)ものでさえ、素人判断で「これは盗作ではないか」と憶測し議論に発展させてしまうなど、問題点も少なくない。
盗作を摘発するには、民事訴訟を提起するほかに、マスコミなどのアクセス権を利用して世間に広く知らしめる方法がある。しかし、事実が確定していないものを盗作と断じ世に広めることは、事実の提示をした場合においても名誉毀損とみなされることがあり、その場合民事・刑事双方の案件となりえる。また、事実の提示をしない場合であっても侮辱罪となりえる。
なお、著作権侵害、名誉毀損及び侮辱罪は、いずれも親告罪である。
パクリ
盗作の類義語として用いられる用語に「パクリ」がある。「パクリ」とは、盗んだもの、盗んだことを意味する名詞である。また、盗作よりも広義であるため、必ずしも著作権侵害とは関係のない場面においても使われている。→ぱくりを参照
二重投稿
既に発表された自作品を他の新聞・雑誌・放送などのマスメディアに複数投稿する「二重投稿」も、投稿先が著作権者となるような場合などには盗作と位置づけられることがある。
関連項目
関連書籍
外部リンク
- 創作・二次創作 問題提起・検証サイトリンク集(リンクトラブル、ネットトラブル、盗作検証・考察サイトへのリンク集)
- 忙しい人のための簡略「提言騒動」話(盗作にからんだネットトラブルも含めた考察、検証サイトへのリンク集)